第2回 野菜の品種別調理特性検討会(タマネギ)報告-2●
【検討会】
◇総合司会
副理事長 大沢敬之
◇開会挨拶
名誉理事長 鈴木康司
 タマネギは、鮮度を重視する野菜の中で比較的保存性もあり、常備菜として調理に広く利用されている。野菜の持つ機能性への関心が高まる中で、血液サラサラでは消費者の注目を引いている。
 当会の長年の研究会でもタマネギは調理用途の広い野菜なので、美味しく食べるという切り口からは品種のもつ特性と、調理方法との関わりが大きいことが話題にあがった。このことから、当会は農林水産省の受託事業で取り組むことになり検討会に取り入れた。多様な調理の視点と、官能評価の視点に重点を置いて企画した。
【講演1】
「タマネギをめぐる情勢」
農林水産省生産局生産流通振興課流通加工対策室
  園芸消費促進班消費促進指導係長
 三浦 礼子氏
  • 野菜の産出額は約2兆円であり畜産、米の産出額に匹敵している。
  • 作付面積は約44万ヘクタール、生産量は約1200万トンであり近年減少傾向。
  • 消費量は平成19年度では、小学生の嫌いな食物上位10品目中7品目が野菜で、特に若年層が消費不足である。
  • 消費拡大対策として、厚生労働省の「健康日本21」で推奨されている摂取目標と民間団体を巻き込み、野菜の消費拡大を促進している。
  • 食糧自給率向上に向けた戦略的対応の強化、19年度の自給率はカロリーベースで40%、世界主要先進国のなかで最低水準となっている。
【講演2】
「日本のタマネギ品種の変遷」
 渡辺採種場株式会社 代表取締役社長 渡邉 穎悦氏
<原産の分布、日本渡来、品種の分化>
 辛タマネギは東欧のルーマニア、ユーゴスラビアから16世紀にアメリカに入り、甘タマネギは、スペイン、フランス、イタリアより遅れてアメリカへ入り、日本には主として明治以後アメリカより入ってきた。
 
 現在の北海道の品種は主として北米北部、マサチューセッツ州などより導入、北海道の気候に順化したものを利用して改良された。北海道で栽培されるタマネギは専門的には「長日性品種」とよばれ、玉の肥大が比較的長日条件下で始まり、肥大して成熟する早さにより超極早生〜早生、中生、晩生〜極晩生種に分類される。極早生種以外は晩生品種ほど長期貯蔵性に優れ、9月に収穫されたものが翌年5月(一部6月上旬)まで出荷される。貯蔵性を究極まで高めた結果、玉が硬く締まり、辛みの強い品種が多い。
 一方、本州以南の品種は北米中部やフランスなどから導入されたものが各地で順化され、現在の品種の元となっているようである。栽培される品種は「短日性品種」と呼ばれ、玉の肥大が比較的短日条件下で始まるためにそのように呼ばれる。同様に肥大して成熟する早さにより、極早生品種〜極晩生種に分類される。概して早生品種は貯蔵性が劣るため、収穫後、即販売され、柔らかく、辛みが少ない。しかし、中〜晩生種の中には適度の辛みや、糖度の高いもの、貯蔵性も優れた品種もある。

 世界のタマネギの分類は数え切れないほど多くあるが、日本で栽培されている主流はイエロウ、タンバース系をもとにしたF1品種で、黄色く辛味があり球形であるのが特徴で、日本産として多く輸出されている。

<特性と品種分化>
 タマギの辛味はアイリンが空気に触れることでアリシンが生成されることで生ずる。品質の評価は用途によるので難しいが、一般的には甘味が強く、軟らかいものが美味しいとされている。生食には辛味が強くないのが好まれる。
 早生品種は柔らかく甘味が多く辛味は少ないので生食に適し、加熱調理には水分が多すぎるので不向きとされる。
 貯蔵に向く極晩生系品種はしっかり緊って硬く、辛く、生食より加熱調理に向いている。
 その他、休眠と貯蔵、抽台性、分球性、病害虫の発生についての説明を受けた。
<育種と採種>
 タマネギを開花採種するには2年を要する、よって交雑固定から固定種を育成する場合、約8世代16年を要する。長い時間のかかるタマネギの育種の話を聞いて、頭の下がる思いでした。
【タマネギの官能検査】
 味覚と食嗜好研究所代表 山口 静子氏
<タマネギの品種> <調査方法>
  • スーパー北もみじ(有機、慣行)   
  • もみじ3号
  • 七宝早生7号
  • 生と加熱(3分)で食べ比べる
  • タマネギのコンポートクリームで食べ比べる
<評価>
  • 品種と調査方法で、いずれが好ましいかアンケートをとった。その場の速報では慣行栽培より有機栽培のほうがやや優れた。(後日、おいしさ検討部会から報告予定)
 

タマネギの品種別調理特性検討会報告
| 目次 | 検討会 | 講演1 | 講演2 | 官能検査 | 出品品種 | 調理説明 | レシピ |
| アンケート | 閉会挨拶 | 後書き | 謝辞 |

 
>>> フォーラムのトップへ