第4回 野菜の品種別調理特性検討会(キャベツ)報告-2●
【講演要旨】
「キャベツの品種と作型 −常備野菜として周年供給される秘密−」
千葉県農林総合研究センター 東総野菜研究室 研究員 町田 剛史氏

 原生種は地中海沿岸地帯(シシリー島〜イタリヤ半島)にある野生種からケール、キャベツ、ハナヤサイなどが分化したとされ、石灰質を多く含む土壌に自生し、BC2,500年頃から栽培されていたとされる。

 世界への広がりは、1世紀頃に南欧で結球性に発達、中世にはイタリヤを中心に品種改良され、近世になり米国で品種改良され現在のキャベツになった。現代、世界で年間7,000万t以上の生産量で、これは世界人口が約70億人とすると、10kg/人・年(≒1人当たり年間7〜8玉)の消費量(FAO)となる主要な野菜である。


町田 剛史氏
 日本には江戸時代末〜明治初期に外国人居留地、船員のために栽培が開始され、明治〜戦前に寒冷地(北海道・東北の開拓地)で栽培されたが、当時の和食文化には不向きであまり普及しなかった。戦後(1945年〜)、トンカツなど洋食文化の普及に伴い需要が増え、その結果、品種改良、栽培流通技術の進歩により生産量はタマネギ、大根に次ぐ野菜として急激に増加した。
■品種と分類
 常備野菜のキャベツは品種数が最も多い野菜の1つで国内に約500品種が公表されている。現在、ほぼ100%がF1品種で、多様な交雑により、もはや固定種による○○系というような育成系統分類の意味は薄く、以下に示す品種の「外観・品質」による分類が妥当である。
■代表的な産地と作型・キャベツの生理

 冬春どり産地 関東〜東海の沿岸地帯
 夏秋どり産地 長野・群馬の高冷地

  • 外葉の形成は5〜28℃。結球肥大は15〜20℃の限られた温度帯。高温で軟腐病など、低温で凍害に伴う腐敗などの発生がある。(品種によってはより高温に耐える品種もある)

  • 本葉12枚程度(≒茎がボールペンの太さ以上の苗)に生長し冬季などの低温遭遇で花芽分化し、その後の春季の高温・長日条件で抽台し、裂球し、開花に至る。
■加工・業務用への周年供給(端境期の解消技術)
 カップ入りのサラダなどのカット生食向きには葉質の軟らかい春系が用いられるが、トンカツの付け合わせなど外食・中食産業用には結球がしっかり締まる寒玉系が主流である。
  • 過去には「4〜5月の端境期」対策には冷蔵、輸入ものを利用し、新鮮なキャベツが供給できなかった。しかし、春系の適品種と適期播き・トンネル栽培、環境制御で4〜5月出荷を可能にした。それには適品種を使い分けし、適地・適時期に栽培することが大事である。
    (晩抽性で早生種の「YR春空」、「かんろく」、「YR天空」を使い分け11月5日から10日間隔で播種し、トンネルで保温と低温を防止し、花芽分化しないぎりぎりの大きさで越冬させる。真冬の銚子半島;気象衛星データを使い微妙な温暖地を検索し冬季の栽培畑を決めるなどの手法)
  • 追肥の省力・減肥で環境に優しい栽培
    キャベツのセル苗に特殊な緩効性コーティング被覆肥料(例; 育苗自慢2401等ほとんどが窒素肥料)を施肥し、レタスの後作に定植する。
  • 春先に暖かさ、高温が続くと3月中旬〜下旬穫りの作型では抽台の可能性があるが、キャベ ツは順次播種・定植しているため全体に生育が進み前倒し収穫で対処し、消費者には迷惑をか けないようにしている。
■まとめ
 キャベツは品種、作型、栽培地、栽培方法の組み合わせにより、生食用、業務・加工用ともに周年供給が可能である。安全で安心な国産キャベツを是非食べていただきたい。

第4回 野菜の品種別調理特性検討会(キャベツ)報告
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