第9章 野菜のおいしさに関する意識調査とタマネギの官能評価
味覚と食嗜好研究所 山口 静子
2 意識調査

2.3 野菜に関する意見の概要
 それぞれの質問に対して多くのコメントがあった。回答者の多くは野菜の専門知識を有するわけではないが、都内や近郊を中心とする生活者が実感している、統計的な数字では読み取れない生の声を記録し伝えることは野菜のあるべき方向を考えるために意義あることと思われる。

1)最近野菜について感じたこと
 味が薄くなり、甘みが強調され、苦味、渋味、えぐ味やクセがなくなったこと、香りも薄くなり、野菜の持ち味や個性が乏しくなったことが多くあげられた。見た目より実質中身の大切さが指摘された。旬、季節感に関する意見も多く、生産に関してはできるだけ自然に近い農法を望む声が多かった。具体的事例として多くの野菜が取り上げられたが、味の薄くなったきゅうり、品種改良でバラエティ化が進んだトマトには特に多くのコメントがあった。(詳細は附票を参照

2)野菜について望むこと
 甘味を受容する人もただ甘ければいいわけではなく、酸味などのバランスの重要性をあげる人が多く、苦味やえぐ味などクセのある味の重要性も指摘された。どの味を強調するというより野菜本来の味を重視する意見が多くあった。新しい品種や品質改良よりも今ある野菜を大切にし、伝統を残すことの重要性を訴えた意見が多かった。野菜の機能として栄養、健康の重要性についても指摘された。安全・安心については特に関心が高く、それに伴い、農薬、農法について自然農法からアグロバイオを含む様々な意見があげられた。また、流通、販売、価格についても多くの意見があった。食べることに関する自覚と意識の高揚とそれを支えるメディアの責任や食教育の必要性が指摘された。(詳細は附票を参照

3)本来の野菜らしさがなくなったことの意味
 味が薄く、深みがなくなり、甘味が増し、コクのような複雑さが乏しくなったこと、野菜本来の苦味やえぐ味がなくなったこと、香りがなくなり、それぞれの野菜の〜らしさを示す特徴がなくなったこと、かたいものが嫌われ、しっかりした歯ごたえがなくなり、あるいは硬直した不自然な食感のものがでてきたことがあげられた。農法についても多数のコメントがあった。(詳細は附票を参照

4)野生味の意味
 苦味、渋味、えぐ味、クセ、アクなど、生得的には好ましくない味があり、青臭さや人参臭さなど独特の臭いが強い、歯ごたえがある、かたい、繊維がある、土の匂いや成分がある、形は不揃いで、洗練されていないが生命力があり、逞しさがある、など、必ずしも好ましくはないが、自然さに高い価値がおかれていた。(詳細は附票を参照

5)野菜本来の味、風味、食感が失われることへの対策
 現状でよいとする意見もあったが、甘味ばかりを追求しない、かたいもの価値を見直す、旬を取り戻す、本来の野菜の特性を大切にする、食べ方、調理法の工夫する、在来種の保存、風土にあった農法を進める、野菜本来の味を知らしめるための情報提供や啓蒙の必要性など広範な意見が出された。(詳細は附票を参照

6)果物、野菜の甘味化
 もっと甘くしてほしい、糖度を上げられたのは技術の進歩の証であるなどの肯定的な意見もあったが、味のバランス、健康、味覚の正しい発達からしてもこれ以上は行き過ぎという意見が多かった。(詳細は附票を参照




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