タイトル<野菜の学校>
● 2010年度「野菜の学校」 ●
- 2010年11月授業のレポート -


庄内(山形)野菜の展示

 今期は「日本の伝統野菜・地方野菜」をテーマに、毎月、一地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げます。授業は主に、「その地の専門家の講義」、「伝統野菜1種の他地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ」、「野菜数種の生・加熱による試食」、「それぞれの野菜を生かした料理の試食」、「受講生の意見交換」で構成しています。

開催日:

2010年11月6日(土)

会場:

東京都青果物商業協同組合会議室

テーマ:

庄内(山形)野菜
「温海かぶ、藤沢かぶ、宝谷かぶ、からとりいも、平田赤ねぎ、もって菊、伝九郎柿、さといも、沖田なす、ピリカリ大根」

 今夏の暑さの影響が尾を引き、入手が危ぶまれたラインナップでしたが、講師の江頭宏昌先生はじめ現地の生産・流通に携わる方々のお世話で、いくつものルートを通じて貴重な伝統野菜を体験することができました。ありがとうございました。

【講義】

「山形県庄内地方の在来野菜」

山形大学農学部 食料生命環境学科准教授 江頭宏昌(えがしらひろあき)氏

 各地で伝統野菜の掘り起こしが行われている中で、近年、群を抜いて注目されているのが山形県庄内地方です。在来野菜が豊富に残っているのはもちろんですが、復活のために尽力する方々の活動があってこそで、その柱になっているのが江頭宏昌先生と、在来野菜の新しい味の世界を披露しているアル・ケッチァーノ(イタリアンレストラン)の奥田政行氏です。江頭先生は山形在来作物研究会会長もつとめておられ、奥田氏とともに「第1回辻静雄食文化賞」を受賞されています。今回は、庄内の在来野菜全般の貴重なお話をうかがうことができました。

講義内容の詳細はこちら
(なお、今月の在来作物に関しては、後述の作物紹介の欄もご参照ください)

 ☆   ☆   ☆

●東京青果(株)の澤田勇治氏からは、今年は高温で夏かぶの入荷が例年になく少なかったが、ようやく関東エリアからのかぶが入るようになり、量が増えてきたという現状が報告されました。東京市場には、千葉産が最も多く、青森、埼玉、茨城、栃木などから入荷するそうです。

●調理スタッフとして野菜の学校に関わる園芸家の御倉多公子さんは、山形県酒田市の出身。もちろん庄内在来作物の大ファンであり、今回の企画・入荷に関して中心的な役割を果たしました。御倉さんの話で、特に異常気象が続いた今年、流通しない藤沢かぶや宝谷かぶなどの貴重な在来作物をそろえることができたのは、日頃の地元のネットワークあってこそということがわかりました。御倉さん自身も宝谷かぶ、伝九郎柿は初めて味わうものだそうで、今回の体験が大変貴重なものであることを実感できました。

●調理責任者の領家彰子さんからは、食べくらべのテーマであるかぶを生とオーブン焼きで供するに際し、生は横に切るのと縦に切るのとでは味わいが変わることを体験してもらいたいこと、焼く際の火の通し方が難しく、200℃で歯ごたえが残る程度に焼いていることなどの話がありました。

【食べくらべ】

 「藤沢かぶ」、「宝谷かぶ」、「金町小かぶ(千葉県産)」を「生」と「オーブン焼き」で食べくらべました。

 食べくらべは、もちろん、「おいしい・まずい」の表現はタブーです。各自で食べくらべ、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記してから、6〜7人のグループ単位で意見交換・発表がなされました。


かぶの食べくらべ

主な感想・意見はこちら

【当日の庄内野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
※各野菜名をクリックすると詳細ページがご覧いただけます
庄内のかぶ(藤沢、温海、宝谷) 平田赤ねぎ
からとりいも 食用菊(もってのほか、もって菊)
庄内の大根(野良−ピリカリ、小真木) 庄内の柿(伝九郎、平核無)
【その他、全体の感想より】
  • 「ここでしか実物を見られないかぶ」よい経験をさせていただきました。

  • 今回は大学の先生ということで、学術的な話を聞くことができて、充実していました。伝統野菜には学術的な視点も必要ですね。

  • 幻の庄内野菜をたくさんいただき、貴重な経験になりました。山形県内でも文化が違うこと、庄内でも北と南では栽培品目が異なることなど、大変勉強になりました。

  • かぶの世界観が広まった。もっと見直して食べたいと思う。

  • 庄内かぶの焼き畑農業とその効果についてうかがったことが意外でした。地方の伝統農法はすごい、と思いました。
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