タイトル<野菜の学校>
● 2011年度「野菜の学校」 ●
- 2011年4月授業のレポート -


ひご野菜の展示

 野菜の学校では、昨期、「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座を1年間展開し、大変好評を博しました。今期は引き続き同じテーマで、毎月、昨期に取り上げられなかった一地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げます。授業は主に、「その地の専門家の講義」、「伝統野菜1種の他、地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ」、「それぞれの野菜を生かした料理の試食」、「受講生の意見交換」で構成しています。

開催日:
2011年4月2日(土)
会場:

東京都青果物商業協同組合会議室

テーマ:

ひご野菜
「ひともじ、れんこん、水前寺菜、水前寺せり、芋の芽、熊本赤なす、黒皮かぼちゃ、高菜漬け」

スタッフ:
スタッフリスト
 九州新幹線が開通し、ますます身近になった九州には、各地に個性的な伝統野菜・地方野菜があります。そのトップバッターとして、熊本県の「ひご野菜」を今期最初にご紹介しました。食べくらべの主役「ひともじ」とは、わけぎの類。熊本では「ひともじのぐるぐる」といって、折りたたんでぐるぐる巻き付けた形にして酢みそでいただくので、受講生・スタッフみんなでこの「ぐるぐる作り」にもチャレンジしました。

 東日本大震災によって、東北・関東周辺の農水産業は大打撃を受けました。原発による被害、さらに風評被害も加わり、野菜をめぐる情報も大変混乱しています。受講生には被災者の方もおられ、中には、JRが不通のため、高速バスを乗り継いで数時間かかって参加してくださった方もいました。今回の講座の折々に、それぞれの立場の現状に話が及びました。

【講義】

「ひご野菜」

ひご野菜セミナリオ代表 北 亜続子(きた あつこ)氏

 北氏は熊本を拠点に、 野菜・果物をテーマにした講演・執筆・料理の提案などで活躍中。「ひご野菜セミナリオ」は、ひご野菜をテーマにした市民参加型の学習会。北氏を中心に、専門家によるひご野菜の歴史と成り立ちを学ぶ講座、ひご野菜生産農家を訪ねる圃場見学会、他県の伝統野菜を見学するツアー、熊本在住のシェフによるひご野菜料理を楽しむ会なども展開していらっしゃいます。
 今回はそうした活動、熊本農業の概略も加えて、ひご野菜をご紹介くださいました。
(今月の伝統野菜に関しては、後述の作物紹介の欄も参照ください。)

講義内容の詳細はこちら

 ☆   ☆   ☆

●事務局スタッフで、野菜の調達を担当している高橋芳江さんから、熊本野菜の東京都中央卸売市場での取り扱い状況をレポートしていただきました。「東京では熊本野菜をけっこう食べており、特にトマトは熊本からの入荷が最多で、5割に達するほど。八代の塩トマト、火の国もっこすトマトなどの人気のブランドもあります。また赤なすは周年の出回りで、大長なす、水なす系のばってんなすもよく見かけるようになりました。長い日本列島は周年の産地リレーが特徴ですが、今年は関東近県や東北の産地がどうなるのか、不安です。熊本はこれからデコポン、メロン、すいかなどが続きますが、ハウス栽培のものは石油の高騰できびしくなるなど、予断を許しません。レストランも開店休業状態の所が少なくなく、心配しています」

●今月からスタッフに加わってくださった東京青果(株)の宮坂守文氏は、長い間、なすやトマトなどの果菜専門だったとのことで、熊本の赤なすの普及にも関わったそうです。「赤みのある見かけは少しグロテスクだが、食べ方はふつうのなすと同じで、厚切りを天ぷらにすると、マシュマロのようにやわらかくておいしいものです。今後の野菜入荷は、原発の影響が関わりますが、市場に入荷したものは、検査をクリアし、安心して食べてよいことをぜひ知っておいてほしい」と、風評被害を戒めました。

●スタッフである管理栄養士の松村眞由子さんからは、「ひともじ」についてのアドバイスがありました。「わけぎは分けつするところから、子孫繁栄に通じる縁起物の野菜です。わけぎのヌルヌルがいやと言う人は、けっこういます。その場合は包丁の背でしごいてから調理するといいですよ。また、わけぎの中には空気が入っているので、熱するとふくらんではぜるものです。ゆでる前にギュッと握っておくか、先を少し摘んで空気穴を作っておくと防げます」

【食べくらべ】

 「ひともじ」と、よく出回っている広島産の「わけぎ」、山形産の「庄内あさつき」、埼玉産の「わけねぎ(関東では、わけぎ)」をゆでて食べくらべました。

 食べくらべは、もちろん、「おいしい・まずい」の表現はタブーです。各自で食べくらべ、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記してから、6〜7人のグループ単位で意見交換・発表をします。


ひともじ、わけぎ、あさつき、わけねぎの「ゆで」

主な感想・意見はこちら

【当日のひご野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
※各野菜名をクリックすると詳細ページがご覧いただけます
ひともじ れんこん
水前寺菜 水前寺せり
芋の芽 熊本赤なす
黒皮かぼちゃ  
【その他、全体の感想より】
  • 最新の情報がわかるので、とても勉強になります。

  • 今日のわけぎのように、同じような野菜でも太さや食感、味について食べくらべできる機会はほとんどないので、とても勉強になりました。各地方の食べ方も知ることができてよかった。

  • 食べくらべができ、ふだん食べることのない野菜に触れることができ、とてもよかった。

  • 今年はよりマイナーな地方野菜がテーマで、楽しみにしています。

  • ねぎ類の食べくらべは難しい。野菜消費拡大のために何かできないか? がんばれ東北! 放射性物質の資料があってよかった。

  • とても楽しく学ばせていただきました。

  • 今日は、放射線量の野菜への影響について資料をいただけて、よかったと思います。

  • それぞれの野菜を地域独自の食べ方をしたほうがよいと思う。

  • 初めての参加。参加の皆さんの肩書きに緊張しましたが、和気藹々の雰囲気でよかった。風評被害に負けないように、生産者の皆さんにはがんばっていただき、私たちも応援したいと思います。
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