タイトル<野菜の学校>
● 2011年度「野菜の学校」 ●
- 2011年5月授業のレポート -


大和野菜の展示

 野菜の学校では、昨期、「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座を1年間展開し、大変好評を博しました。今期は引き続き同じテーマで、毎月、昨期に取り上げられなかった一地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げます。授業は主に、「その地の専門家の講義」、「伝統野菜1種の他、地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ」、「それぞれの野菜を生かした料理の試食」、「受講生の意見交換」で構成しています。

開催日:
2011年5月14日(土)
会場:

東京都青果物商業協同組合会議室

テーマ:

大和野菜
「大和まな、下北春まな(漬けもの)、大和丸なす、香りごぼう、大和きくな、大和いも、片平あかね(漬けもの)、サラダなす、半白きゅうり」

スタッフ:
スタッフリスト
 先頃、平城遷都1,300年記念で注目された古都奈良だけに、伝統野菜への期待が高まります。この時期は品目がかなり限られましたが、今回の食べくらべのテーマになった「大和まな」は、見た目も味わいも堂々とした存在感で、これ一種でも大和野菜の奥深さに目を開かれました。
【講義】

「奈良県の歴史地理と大和伝統野菜」

奈良県農林部マーケティング課 田中 久延氏(たなか ひさのぶ)氏

 田中氏は平城遷都1,300年記念事業を担当後、2008年に新設されたマーケティング課で、地域振興における「食」の重要性、地元食材を使う料理の価値、大和伝統野菜の可能性など、各方面からの意見を踏まえて、大和伝統野菜を今後の奈良県農政の成功モデルにすべく活動しておられます。今回は奈良という稀有な地ならではの歴史・地理から説き起こして、大和伝統野菜の動向を、関西弁で軽妙にお話しくださいました。

講義内容の詳細はこちら

 ☆   ☆   ☆

●スタッフである管理栄養士の松村眞由子さんからは、大和野菜を調理・味わう時のちょっとしたアドバイスがありました。
 ・大和丸なすは緻密な肉質が特長。油で焼く時にはスポンジ状の果肉に部分的に油がしみこみがちなので、なすに油を塗るとよい。
 ・また香りごぼうはやわらかいので、皮はたわしでこする程度にしてして、水に入れてもすぐ出す、短時間で調理するなど、香りを大事にしてほしい。
 ・大和いもの皮は黒、近くの伊勢いもの皮は白。洗った後、水分をよくとってから皮をむくと、かゆくなりにくい。
 ・大和きくなは、いわゆる春菊に比べて、大きく肉厚。茎が固いので、葉と茎は別々に調理したほうがおいしくできる。生で食べるのがお薦めで、コチュジャンのたれや粒マスタードドレッシングが美味。しめさばのアクセントにもなる。

●調理担当の領家彰子さんは、教室に先立って大和まなの生産者農家を訪ねた体験を、映像と共にレポートしました。生産者の上田喜章さんの家は江戸時代中期からの代々の農家。大和まなは自家採種で、水田の裏作として続けてきたそうです。採種のポイントは、筋っぽくなく、生育が早く、エグミが少なく生でも食べられる、うぶ毛が少ないこと。ある時から茎が赤いタイプが出てきて、料理屋さんが好んで使っています。大和まなの茎立ちも甘みがあっておいしいそうです。

●東京青果(株)の宮坂守文氏からは、東日本大震災の市場への影響についての話がありました。野菜特にきゅうりは福島が大産地なので、今後の入荷に影響大と予想されるが、市場に出回る野菜は行政の管理下にあるので、安心して食べてほしいと強調しました。

【食べくらべ】

 「大和まな」と、「小松菜(埼玉産)」、「しんとり菜」、「べか菜」をゆでて食べくらべました。

 食べくらべのコーディネーターは、スタッフの山本謙治氏(農産物流通・ITコンサルタント)。今回の食べくらべは、いずれも「つけ菜」と称されている葉物で、まず「つけ菜」の定義から。つけ菜とは「アブラナ科アブラナ属の非結球の葉物」を指します。野沢菜、高菜、茎立ち菜なども「つけ菜」の類。ただ、東京市場では「つけ菜」と呼んでも、地方の市場では呼び方が変わることも多いそうです。


大和まな、小松菜、しんとり菜、べか菜の「ゆで」

 食べくらべは、もちろん、「おいしい・まずい」の表現はタブーです。各自で食べくらべ、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記してから、6〜7人のグループ単位で意見交換・発表をします。

主な感想・意見はこちら

【当日の大和野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
※各野菜名をクリックすると詳細ページがご覧いただけます
大和まな 下北春まな
大和きくな 大和丸なす
大和いも 香りごぼう
片平あかね その他
【その他、全体の感想より】
  • ゆでた葉物の違いは微妙だったが、生で食べくらべてみたら、非常に明確だった。

  • THE伝統野菜なのですね! 文化的背景がよくわかった。畑レポートがよかった。

  • とても難しい食べくらべでしたが、それゆえに大変勉強になりました。伝統野菜が生まれる背景、その土壌を知ることができてよかった。

  • 食べくらべは大変勉強になります。同系の野菜でこれほど違うとは思わなかった。

  • 毎回、珍しい野菜の講義・展示をありがとうございます。栽培されている地域の風土や歴史などの紹介もあり、大変参考になります。

  • 大和野菜を初めて知り、食べることができました。大和まなも美味しくて、奈良が農業が盛んではないのが残念です。これから伝統野菜を全国に広めていってほしいと思います。

  • 京野菜、加賀野菜は知っていましたが、大和野菜は初めて聞きました。市場に売り込みもしているとのことですが、取り扱いのある市場情報と野菜情報が中間業者にももらえるといいと思いました。

  • 京野菜、加賀野菜はよく耳にしますが、奈良野菜という新しい野菜に触れることができました。「つけ菜」も様々な種類があること、アブラナ科であることなど、勉強になることがいっぱいだった。

  • 大和まなを初めて見て、食べました。食べやすく、味のバランスがよい葉物だが、個体差がある。

  • 大和きくなのやわらかい香りは、生食にとても向いていると思いました。サラダ、やってみたい。
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