長氏は旧雇用・能力開発機構京都職業能力開発センター所長を退職後、滋賀県文学祭文芸部門委員会委員・随筆部門選者、「滋賀の食事文化研究会」の活動を行っている。共著に『芋と近江の暮らし』(サンライズ出版)他多数。京都新聞社から『近江植物歳時記』、論文には「近江のダイコン〜文献を中心として〜」『滋賀の食事文化(年報)』など。また滋賀県文学祭随筆部門で「お爺さん先生」「そばと石臼」が特選・芸術文化祭賞を受賞。
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●スタッフの調理責任者である領家彰子さんは、この滋賀野菜の講座の前に滋賀県に出向き、日野菜の栽培の様子を見学してきました。その時の様子をスライドで紹介しながら報告。京都から近江鉄道の一両電車で出向いて日野町下車。山のすぐ脇が産地で、砂地のようだったので、スッと簡単に抜けるのが意外だったそうです。産地では日野菜を漬けもの用に周年供給したい意向で、畝を分けて栽培していたとか。またレストランやすし屋などでは小さいサイズの日野菜の需要も出てきているとのことでした。
(長先生から、日野菜の栽培地は粘土質なので、そこは種採りをする栽培地だった可能性があるというお話が追加されました)
調理責任者として、今回のかぶの食べくらべや料理の試食について、ひとこと。「用意した漬けものは、長先生の奥様の手作り。産地の漬けものもいただいたので、それを料理に生かしてみました。今回のかぶは本来漬けものにするべきだが、かぶは細胞が壊れない限り持ち味が出ないので、講座前の短時間の調理では無理。塩が沁みたところをぜひ想像して食べくらべてもらいたい。それには、断面を見て、皮の赤や緑がどこまで入っているか、マーブリングの状態、維管束で終わっているのかどうかなどが参考になります。また固さは、果肉が緻密なのか、繊維なのか。そしてかぶ特有のイソチオシアネートの香りもぜひ味わって」
●今回はかぶがテーマということで、山形庄内の食の紹介人・佐藤栄子さんが参加。せっかくの機会なので、庄内のかぶについて少しお話ししていただきました。
「山形ではかぶを干すことはしないので、今日、そのことを初めて知りました。この時期は、宝谷かぶといって、鶴岡市の月山を下った標高400mくらいのところで焼き畑栽培されるかぶがあります。元々、畑山丑之助さんが一人で守ってきたかぶだったのが、数名で栽培するまでになりました。宝谷かぶは繊維が強く、肉質が固く、辛みがある。漬けものより、焼くか煮るかしたほうが利用価値が高くなります。種子を確保していくには隔離栽培する必要があるので、今年は耕作放棄地で栽培されました。12月4日から販売開始です。庄内のかぶもどうぞよろしく」
●東京青果(株)の宮坂守文氏からは、市場の状況報告。かぶに関しては、東京の市場は小かぶが中心で、青森の赤かぶが若干入る程度。関西は白かぶでも東京の倍くらい大きいものが取引されるので、食文化の違いがわかるといったお話がありました。東京青果でも、かつて近江野菜に取り組んだものの、京都や加賀の伝統野菜のようには成功しなかったそうです。滋賀野菜はやはり関西中心のよう。
●スタッフである管理栄養士の松村眞由子さんからは、今回、かぶの栄養成分などを調べる過程で気づいたことがまず話されました。『日本食品成分表』に日野菜と広島菜の数値が載っているのを見て、これらがメジャーな野菜だったことに驚き、一方で他の野菜に比してなぜこれらの数値が上がっているのか疑問が沸いたとのこと。
また、かぶの調理法について、元々、かぶは漬けもの以外にも料理がしやすい食材で、皮のままくし形に切り、オイスターソースなどの中華炒めがお薦めとか。今回のかぶはどれも、切るとまな板に包丁の跡がついてしまうほど大変固かったそうで、独特の歯ごたえをぜひ味わってほしいとアドバイスがありました。
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